『M&A』

Mergers and Acquisitionsの略で、シリコンバレーではよくあるニュースだが
一社がひと月の間に3つもの会社の買収を発表するとはちょっと驚き。
そう、インテルのニュースである。
しかもトータルの買収金額では(全ての買収金額を明らかにしたわけではないが)
100億ドルに達する模様。  (McAfeeの買収金額は同社にとっても過去最高)

8/16 (米国時間) Texas Instruments(TI)のケーブルモデム部門
8/19 セキュリティ大手の米McAfee
そして
8月30日、独半導体メーカーInfineon Technologiesのワイヤレス事業

実は筆者も96年の半ばに企業買収を経験した。
当時は半導体の景気好調の波におされて、いくつものスタートアップが生まれ、また
そこからIPOを達成した企業も数多くいた。
我々もIPOを目指して半導体設計ツールを開発していた。
半導体設計の手法の一つを提案し、新しいマーケットがうまれ、そのマーケットがを
少しづつ育ってきていた。
評価してくれた顧客がツールを購入しそして設計にも使うようになってきた。
入社時に25名だった社員数が50名を超えた。
休憩時間の社員の話題にIPOの噂もちらほらでてきたりしていた。
社員の全員が手ごたえを感じていた時、買収は唐突にやってきた。

ある朝、会社に出かけると、社内の雰囲気がいつもと違う。
聞けばボードメンバーが会議室に全員がこもって緊急Meetingが行われているという。
しばらくすると、社内にいる社員全員もそのMeetingに参加するようにとアナ
ウンスされ、会議室に入ると一人だけうちの会社に属さないが人物が立っていた。
『皆さん、我々の会社にようこそ!』
その人物は業界最大手のCEOだった。 その彼が我々の会社にようこそ、とは?
ぽかんとしている我々社員の前で彼の言葉が続いた。
『我々の会社はあなた方が作った新しいマーケットと製品が今後のビジネスのコアに
なると信じています。あなた方全員で弊社に来てもらいます。』
彼の挨拶のあとで、彼が合図すると、会議室のドアがパッと開いてシャンパンや
スナックの類が次々に会議室に運びこまれ、新しいCEOの音頭で乾杯。
なにかTVや映画を見ているようだったが、これがシリコンバレーで最初に働いた
スタートアップが買収された瞬間だった。

インテルはGoogleとのインターネットTVでの提携を発表している。
そしてワイヤレス事業をInfineonから手に入れ、それらを供給する端末でのセキュリティ技術にはMcAfeeの技術を使う。
方向転換を決めたら、巨人とは思えないほどの素早い動きで対応していく。
マイクロソフトとともに、PCのマーケットを生み、またそのマーケットが成長して
いくなかでのCPUというコアビジネスを独占し続けてきた半導体のトップ企業転換
はどのように実を結ぶのだろうか。

今後の展開に期待が膨らむと同時に時代の変遷を感じずにはいられない。

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