ビッグデータのAIとDX


AIという言葉は数年前からあちこちで見かけるようになりましたが、最近はDXの勢いが増しています。IT関連のニュースだけでなく、SNSの投稿でも、「DX」という文字が入った見出しが目白押しです。

以前から気になっていたのですが、とにかく「AI」か「DX」を差し込んでバズろうとする傾向はあると思います。

でも、DXには罪はないです。デジタル トランスフォーメーションに厳密な定義を設けているDXコンソーシアムみたいなのが存在するのかもしれませんが、「デジタル」も「トランスフォーメーション」も昔からある言葉だし、言葉だけの意味でいったら、DXの範囲は相当に広いです。経理担当者がそろばん弾くのをやめて電卓を使いだしたら、その会社がDX宣言しても、まったくの噓というわけではありません。

昔、学校で教室を掃除するときに使うほうきを「文明の利器」と呼ぶ先生がいましたが、あれが掃除機に変わってもDXかどうかは微妙ですが、ルンバに変わったら間違いなくDXでしょう。

先日、某外食チェーンの新サービスを取り扱った記事に『コロナ禍で加速する朝外食DX』というタイトルを見かけました。レストランにもDXの波が押し寄せているのか、と感心しながら目を通したら、どうもDXの要素が見当たらない… ただ、メニューは朝食のわりにやたら豪華でDX(デラックス)でした。

これも決して間違ってはいません。『コロナ禍で加速するDX』なんて言われたら、あっちのDXかなと勝手に先入観を持った自分が悪いだけで、マツコ デラックスさんのDXのほうが、本来よく使われていた元祖DXです。

DXよりも、むしろ気になるのはAIです。AIが将棋でプロ棋士に勝ったとか、AIが接客してくれるとか、そういう人間の知能に代わる作業を「人工知能」がやるという話題なら、なるほど、すごい世の中になったなぁ、とひとしきり感心したりもするのですが、時々どの部分が人工知能の作業なのかわかりにくいものもあります。

先日、NHKドキュメンタリーでAIにコロナ関連の膨大な論文を徹底解読させるという番組を観ました。番組自体は非常にためになる素晴らしいものです。ただ、素人目にはAIの用途がいまいち理解できませんでした。世界中の最新論文を人間が読むのは大変だし、時間がかかるからAIにやってもらう、という部分は完璧なAIフル活用です。まさに究極のDXで、AIの真骨頂と言えるでしょう。

仮に、AIがロボットだったら、人間とこんな会話をするでしょう。

AI:「論文、全部読んだよ」

人間:「もう、読んだの!? さすが、AI」

AI:「・・・」

人間:「で、どうだった?」

AI:「読みごたえがあったよ」

人間:「どのへんが?」

AI:「ファイザー、アストラゼネカ、キラーT細胞、免疫回避…」

人間:「おー、そんなキーワードがでてきたのか!それで?」

AI:「・・・」

人間:「たとえば、その… ワクチンは変異種にも効くの?」

AI:「・・・」

というような会話が展開されたような感じです。もちろん、実際には会話はなく、人間からの質問はAIにではなく、専門家に向けられて、専門家が丁寧に回答していました。だから、情報番組としては十分に役立つ、良質のプログラムでした。

でも… そのAIって、検索エンジンでは?論文読んだAIが、質問にも答えてくれたら、まさにAI様様だったのに、論文読んだのは、疑問に答えるためではなく、キーワード洗い出しのためだったようです。まぁ、キーワード洗い出しでもAI様様です。そのあとで、専門家がどの論文を優先的に読むべきかとか、とか、どの順番で読むべきかがわかるのですから。

ただ、『AIが徹底解読!』と銘打つのなら、AIが論文の内容にもっと踏み込んでくれるような展開を期待してしまいました。

このAIは、論文を厳密には「解読」していないけど、仕分けはしてくれているようでした。番組では、個々の論文の相関関係がネットワークデータベースのようにイメージ化されていました。膨大すぎる論文がビッグデータを構成する場合に、それをAIが仕分けしてネットワークデータベース化してくれるなら、大変便利に違いありません。AIがデータレイクをデータウェアハウスに自動変換してくれる感じでしょうか。それはそれでかなりのDXです。デジタル トランスフォーメーションという意味でも、デラックスという意味でも。

 

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