良いダッシュボードとは?


良いダッシュボードとは、とにかく速度計がいちばん見やすくて、その次にガソリンの残量とエンジン温度、何か問題が生じた場合にインジケーターが点灯するのがベストです。

なんだ、クルマの話か・・・・

と思われたでしょうか。いや、ビジネス用ITツールのダッシュボードも同じです。そもそもダッシュボードとは、自動車などの計器盤のことなので、ビジネス用のダッシュボードでも基本は計器盤です。良いダッシュボードは、基本に忠実な、ドライバーのことを第一に考えるダッシュボードです。

ドライバーとは、それを運用する人のことです(余談ですが、英語のドライバーは便利な言葉で、何かを動かす人や物は皆 driver です)。

まず、ドライバー(ユーザー)がもっとも必要としている情報は何か?

その情報をいちばん目立つところに極力見やすいように表示します。情報の必要度に優先順位を付け、必要な度合いに応じた表示を工夫しなければなりません。クルマも運転中に燃料計を気にする必要はあるけれど、速度ほどに気にする必要はありません。気にする度合いは速度よりずっと低いので、燃料計が速度計と同等レベルに目立つダッシュボードは決して良いダッシュボードとは言えません。

ここで言う、見やすさとは、大きさだけではなく、配置や色合いなどのデザイン全般です。色鮮やかだったりお洒落だったりする必要はなく、とにかく見やすさ第一です。事故ったら、お洒落もくそもないですから・・・

次に、必要な情報を必要なときだけ伝えるインジケーターが重要です。当たり前ですが、エンジン チェック ライトが年がら年中灯っていたら、誰もチェックしなくなります。ダッシュボードの情報がオオカミ少年扱いになるのは避けなければなりません。

かと言って、会社の業績レポートのダッシュボードで、ある日突然、倒産インジケーターが表示されるのも考えものです。重要なのは、ドライバーが情報に対応できること。対応できない情報は意味がないし、対応が必要なときにタイムリーに情報を与えるのが、ダッシュボードの役目です。

対応できる、できない、で言ったら、ダッシュボードの対象者を絞るのも重要です。部署や担当によっては、それを見せられてもどうしようもないけど・・・という情報も多々あります。対応できる人が対応しやすいように情報を与えるのもダッシュボードの役目です。データは、それを受けてアクションが取られなければ、そのデータに価値はありません。

エンジン チェック ライトに話を戻すと、常にOKランプが灯っているのも考えものです。OKが前提の状況で、OKという情報を常に与えられたら、その情報は「静的」です。どうせ今日もOKに決まっているからと、ドライバーはその情報を見るのをやめてしまいます。ある日突然OKランプが消えていても誰も気づかないでしょう。

情報はなるべく「動的」でなければなりません。刻一刻と変わる情報なら常に提示すべきですが、ひと月ごとぐらいにしか変わらない情報を毎日提示するのは意味がありません。

最後に、ダッシュボードのデザインも静的になってはいけません。これは、クルマのダッシュボードが唯一手本とならない点かもしれません。ビジネスにおけるダッシュボードのニーズは移り変わるので、表示する情報の優先順位や見せ方も随時見直す必要があります。クルマのダッシュボードだって、自動運転の普及に応じてデザインが変わってくることでしょう。クルマのダッシュボードが見本にならないのではなく、ニーズの移り変わりがこれまで緩やかだっただけに過ぎません。

ダッシュボードとは、本来、命を預かる大事な情報の表示盤なので、ドライバーのニーズを最優先するデザインの本気度が違います。ビジネスのダッシュボードは、本家(クルマ)のダッシュボードのように命にかかわることはないので、その仕様が変わるのは当然なのですが、時には本家のダッシュボードが示してくれる基本に立ち返ってデザインを見直せば、利用価値が格段に上がることは間違いありません。

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