BoxからGoogle Workspaceへの移行は、単なる「ファイルのコピー」ではなく、設計思想が異なるシステム間の引っ越しであるため、難易度は高く、慎重な計画が必要です。
Boxの主な問題点(デメリット)
Boxはセキュリティや権限管理に優れたサービスですが、以下の点が課題として挙げられることが多いです。
- コストが高い:
- Boxは「ストレージ専業」のため、Google Workspace(メール、チャット、Web会議、Office機能込み)と比較すると、純粋なコストパフォーマンスで見劣りします。Google WorkspaceとBoxを併用する場合、コストが二重にかかります。
- 動作の重さと検索性:
- 同期の遅さ: 専用アプリ(Box Drive)の同期やキャッシュの読み込みが遅いと感じるユーザーが多いです。
- 検索: ファイル数が増えると、目的のファイルが見つけにくい、検索精度がGoogleに及ばないという声があります。
- 「深い階層」による管理の複雑化:
- Boxはフォルダを無限に深く作成でき、下位フォルダごとに複雑な権限を設定できてしまいます。これが逆に「誰がどこにアクセスできるか管理者が把握できない(権限のスパゲッティ化)」状態を招きやすいです。
Google Workspaceの利点
Google Workspaceの最大の利点は、単なる「ファイル置き場」ではなく、「チームがリアルタイムで協力して仕事を進めるためのプラットフォーム」である点に尽きます。
Boxからの移行を検討されている文脈を踏まえ、特にメリットを感じやすいポイントを5つに絞って解説します。
①圧倒的な「リアルタイム共同編集」
これが最強の利点です。WordやExcelファイルを「送って、直して、送り返す」というバケツリレー業務がなくなります。
- 同時編集: ドキュメント(Word相当)、スプレッドシート(Excel相当)、スライド(PPT相当)を、複数人で同時に開き、会話しながら編集できます。
- バージョン管理不要: 「最新版はどれ?」という混乱が起きません。常に目の前の画面が最新版であり、変更履歴は自動ですべて保存され、いつでも過去の状態に戻せます。
- コメント機能: ファイル内の特定の箇所にコメントし、チャットのように議論・決定を行えます。
②「All-in-One」による連携とコスト削減
Google Workspaceは、メール、カレンダー、チャット、Web会議、ファイル管理がすべて統合されています。
- シームレスな連携:
- カレンダーの予定からワンクリックでWeb会議(Google Meet)に参加。
- チャット中にファイルを即座に共有・権限付与。
- メール受信画面からそのままカレンダー登録。
- これらが画面遷移なしでスムーズに行えます。
- コスト削減: Zoom(Web会議)、Slack(チャット)、Box(ストレージ)などを別々に契約している場合、Google Workspaceに一本化することでライセンス料を大幅に削減できる可能性があります。
➂ Google品質の「検索能力」
「ファイルが見つからない」というストレスが激減します。
- 高速・高精度: Google検索エンジンの技術が使われているため、検索スピードが圧倒的に速いです。
- 中身まで検索(OCR): ファイル名だけでなく、ファイルの中身のテキスト、さらには画像やPDFの中に写っている文字まで認識して検索結果に表示します。
④ブラウザ完結(場所・端末を選ばない)
専用アプリのインストールが必須ではありません。
- どのPCでも同じ環境: インターネットとブラウザ(Chromeなど)さえあれば、会社のPCでも、自宅のPCでも、スマホでも、全く同じように仕事ができます。
- VPN不要: 基本的にHTTPS通信で暗号化されており、ゼロトラストセキュリティの考え方に基づいているため、重たいVPNを通さずに安全にアクセス可能です(設定によります)。
⑤AI(Gemini)との統合
現在はこれが大きな差別化要因になっています。
- Gemini for Google Workspace: メールの下書き作成、会議の議事録自動生成、スプレッドシートのデータ整理などをAIが手伝ってくれます。BoxにもBox AIがありますが、メールやカレンダーまで含めた広範囲なAI支援はGoogleの強みです。
Boxと比較した際の「決定的な違い」
Boxと比較すると、Google Workspaceへの移行は「守り」から「攻め」へのシフトと言えます。
- Box: 「重要データを厳重に守る・管理する」ことに特化しています(管理職・情シス視点)。
- Google: 「データを活用して、チームで成果物を生み出す」ことに特化しています(現場・ユーザー視点)。
Boxの堅牢な管理(複雑な権限設定など)を失うことへの懸念はあるかもしれませんが、それを上回る「業務スピードの向上」と「コミュニケーションの活性化」がGoogle Workspaceの最大の利点です。
Google Workspaceへの移行は簡単か?
結論:簡単ではありません。「中〜高」難易度のプロジェクトになります。
「ファイルをドラッグ&ドロップして終わり」ではない理由がいくつかあります。
- 構造の違い: BoxとGoogleドライブ(特に共有ドライブ)は、権限の考え方が根本的に異なります。
- データ量とAPI制限: 数TB(テラバイト)規模のデータがある場合、API制限(1日の転送量制限)により、移行だけで数週間〜数ヶ月かかることがあります。
- 専門ツールの必要性: 手動での移行はほぼ不可能です。「Google Workspace Migrate(公式ツール)」や「CloudM」「Movebot」などのサードパーティ製移行ツールの使用が必須です。
移行に関する具体的な問題点・注意点
移行プロジェクトで最もトラブルになりやすい「落とし穴」は以下の通りです。
① 権限体系のミスマッチ(最大の壁)
これが最も厄介な問題です。
- Box: 親フォルダと無関係に、子フォルダ・孫フォルダだけに特定の権限(外部招待など)を自由に設定できます(ピンポイントな共有が得意)。
- Google共有ドライブ: 「滝(ウォーターフォール)型」の権限です。親フォルダの権限は必ず子フォルダに継承されます。
- 問題: 「親フォルダは見せたくないが、中の子フォルダだけ見せたい」というBoxでよくある構成は、Google共有ドライブの仕様では再現できません。
- 対策: フォルダ構成を根本から見直し(フラット化し)、共有ドライブ自体を細かく分ける再設計が必要です。
② 「Box Notes」の互換性
- Box独自のメモ機能「Box Notes(.boxnote)」は、Googleドライブに持っていっても開けません(ただの無効なファイルになります)。
- 対策: 移行前にWordやPDFに変換するか、中身をGoogleドキュメントにコピペして作り直す必要があります。一部の有償移行ツールでは自動変換に対応している場合もあります。
③ アイテム数と階層の制限
- 50万アイテム制限: Googleの共有ドライブには、1つのドライブ内に「ファイルとフォルダ合わせて最大50万個まで」というハードルがあります。Boxで超巨大なフォルダツリーを作っていた場合、そのまま移行しようとするとエラーで溢れます。
- 階層の深さ: Google共有ドライブは技術的に最大100階層まで対応していますが、深すぎるとパスが長くなりすぎたり、ブラウザでの挙動が不安定になるため、推奨されません。
④ バージョン履歴の肥大化
- Boxはファイルのバージョン履歴(過去の版)を大量に保持しています。これをすべてGoogleに移行しようとすると、データ容量が膨れ上がり、移行時間が数倍に伸びます。
- 対策: 「最新版のみ移行する」という割り切りが推奨されます。
⑤ リンク切れ
- Box内でファイル同士をリンクさせていた場合(Excelの外部参照やハイパーリンク)、移行後はURLが変わるため、それらのリンクはすべて切れます。
次のステップのご提案
Boxの現在の利用状況によって、難易度が大きく変わります。まずは状況を把握するために、以下のような点を確認することは可能でしょうか?
- 「Box Notes」は業務で多用されていますか?
- 「親フォルダは見せないが、サブフォルダだけ外部と共有する」ような使い方は多いですか?
これらの回答によって、移行の現実的なプラン(ツールを使うべきか、フォルダ構成をどう変えるべきか)を検討すべきです。
移行後に関して、Google Workspaceのデータのバックアップに関しても重要な課題になります。Climb Cloud Backup for Google Workspaceがその役割を大いに果たします。
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