ITダッシュボードでKPI(重要業績評価指標)を設定するには、組織全体の目標とIT部門の役割を連携させることが重要です。🔑 KPI設定からダッシュボードへの実装、そしてその後の運用まで、次のステップで進めていくと効果的です。

🎯 ステップ1:KGI(重要目標達成指標)の明確化
まず、IT部門として何を達成すべきか、その最終目標であるKGIを明確にします。ITダッシュボードのKPIは、このKGI達成のために役立つものでなければなりません。
IT部門のKGI例: 「ITコストを5%削減する」「システム障害による業務停止時間をゼロにする」「セキュリティインシデントの発生件数を半減する」など
全社目標との連携: 「売上10%増」や「顧客満足度向上」といった全社のKGIに対し、ITがどう貢献するかを考えます。
📈 ステップ2:KPI(重要業績評価指標)の選定
KGIを達成するために、具体的な行動や進捗を測るKPIを設定します。KPIは以下の「SMART」の原則を満たしていることが望ましいです。
| 原則 | 内容 |
| Specific | 具体的であること (例: サーバー台数) |
| Measurable | 測定可能であること (例: 稼働率99.999%) |
| Achievable | 現実的に達成可能であること |
| Relevant | KGIや組織目標と関連していること |
| Time-bound | 期限が明確であること (例: 四半期末までに) |
ITダッシュボードで設定すべき主要KPIの例
ITダッシュボードは、「システムの安定性・信頼性」、「コスト・効率」、「セキュリティ」などの観点でKPIを選定することが一般的です。
- 安定性・信頼性 (SLA関連)
- システム稼働率: システムが正常に動作している時間の割合。
- 平均復旧時間 (MTTR): 障害発生から復旧までの平均時間。
- 平均故障間隔 (MTBF): 故障と故障の間の平均時間。
- インシデント発生件数: 報告された問題の総数。
- コスト・効率
- IT支出の対売上比率: IT関連の投資額が売上に対して適切か。
- チケット解決までの平均時間: ヘルプデスクなどでの問い合わせ対応にかかる平均時間。
- プロジェクトの予算超過率: 予算内でプロジェクトが完了したか。
- セキュリティ
- セキュリティインシデント件数: 外部からの攻撃や不正アクセスなどの発生件数。
- パッチ適用率: セキュリティパッチが適用されたシステムの割合。
- セキュリティトレーニング受講率: 従業員のセキュリティ意識向上のための指標。
🛠️ ステップ3:ダッシュボードへの実装と可視化
選定したKPIをITダッシュボード上に反映させます。
対象者の考慮: ダッシュボードを見る人(経営層、IT管理者、現場担当者)に応じて、表示するKPIや詳細度を変えた複数のビューを用意すると効果的です。
データソースの接続: 監視ツール、CRM、SFA、財務システムなど、KPIの元となるデータソースとダッシュボードツールを接続します。
目標値の設定: 各KPIに対し、達成すべき具体的な目標値(ターゲット)を設定し、ダッシュボード上に表示します。
適切なグラフの選択: KPIの種類に応じて、進捗状況が一目でわかるように適切なグラフやゲージ(折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、スコアカードなど)を選びます。
🔄 ステップ4:定期的なモニタリングと改善
ダッシュボードは作って終わりではありません。継続的な運用が最も重要です。
- 測定と分析: 定期的に(日次、週次、月次)KPIのデータをチェックし、目標値とのギャップを分析します。
- 原因の特定とアクション: 目標未達成の原因を特定し、「次の一手」となる改善策(アクションプラン)を具体的に決定し、実行します。
- KPIの見直し: ビジネス環境やKGIが変わった場合、またはKPIが組織の行動を適切に反映しなくなった場合は、KPI自体を調整・見直します。
ITダッシュボードは、KPIを通じてIT部門の活動がビジネスに与える影響を見える化し、改善サイクルを回すための強力なツールとなります。
さらに企業でのIT部門の一般的な役割に焦点を当て、3つの主要な目的別に具体的なKPIの候補を考えてみます。
目的別:ITダッシュボードのKPI候補例
1. 安定性と信頼性の向上(オペレーション系KPI)
システムやインフラの安定稼働と迅速な問題解決を目指す場合に重視するKPIです。IT部門の生命線とも言える指標群です。
| KPI候補 | 測定目的 |
| システム稼働率 (SLA達成率) | 契約や目標値通りの稼働時間を達成できているか。 |
| 平均復旧時間 (MTTR) | 障害発生から完全復旧までのスピード。短いほど良い。 |
| インシデント再発率 | 解決した問題が再発している割合。根本原因解決の質を示す。 |
| チケット解決までの平均時間 | ユーザーからの問い合わせ対応のスピードと効率。 |
| 未解決インシデントの割合 | 問題が滞留せず、適切に処理されているか。 |
2. コスト効率と投資対効果の最適化(財務・効率系KPI)
ITリソースの無駄をなくし、投資の成果を最大化することを目指す場合に重視するKPIです。経営層への説明責任を果たす上でも重要です。
| KPI候補 | 測定目的 |
| ITコストの対売上比率 | IT投資の規模が、会社の収益に対して適正か。 |
| クラウド利用コストの最適化率 | クラウド利用において、予約インスタンスや未使用リソースの削減など、費用対効果を高められているか。 |
| IT資産の棚卸差異率 | 実際のIT資産と台帳上の情報にズレがないか。管理精度の指標。 |
| RPA/自動化による削減工数 | 業務自動化がどれだけ人件費や作業時間を削減したか。 |
| 投資プロジェクトのROI(投資収益率) |
3. セキュリティとコンプライアンスの強化(リスク管理系KPI)
情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減し、法的・業界の要件を順守することを目指す場合に重視するKPIです。
| KPI候補 | 測定目的 |
| 重大なセキュリティインシデント件数 | 業務に甚大な影響を与えるセキュリティ事故の発生状況。 |
| 脆弱性スキャンによる未対応件数 | 検出されたシステムの脆弱性に対し、対策が遅れている件数。 |
| エンドポイントのパッチ適用率 | PCやサーバーに必要なセキュリティ更新プログラムがどれだけ適用されているか。 |
| 従業員のセキュリティ意識スコア | 定期的なテストやフィッシング訓練の結果など。人為的なミスリスクを測る。 |
| アクセス権限の定期レビュー実施率 |
KPI設定のポイント
- KPIの数は絞る: 最初は多くても5~7個程度に絞り、最も重要な指標に集中してモニタリングすることが成功の秘訣です。
- KPIツリーを意識する: 選んだKPIが、最終的なKGIにどのように繋がっているのかを明確にしましょう。
これらの候補を参考に、まずは企業にとって「今、最も重要なITの目標」を達成するために必要なKPIを選定することです。
編集後記:
KGI (Key Goal Indicator)
- 意味: 重要目標達成指標。
- 役割: ビジネスやプロジェクトにおける最終的なゴールや達成すべき結果を示します。一般的に、売上高、利益率、成約数など、企業全体の長期的な目標が設定されます。
- 例: 「年間売上10億円達成」、「顧客満足度90%達成」。
KPI (Key Performance Indicator)
- 意味: 重要業績評価指標。
- 役割: KGIという最終目標に向かって進むプロセスの進捗度を測るための具体的な中間指標です。日々の業務の中で何を優先すべきかを明確にし、効率的に業務を進めるための行動指針となります。
- 例: 「新規顧客訪問数:月100件」、「ECサイトの回遊率:〇〇%」。







































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