
長年VMwareを使用してきたシステム管理者の頭痛の種は、Proxmoxにおける一元化された管理オプションの不足でした。話せば長くなるのですが、もとはと言えば、VMwareの料金変更とサブスクリプション モデル、柔軟性の低下に端を発します。Broadcomのライセンスモデルだと、最低72コアのライセンス購入が、たとえ16コアのサーバーしか使っていないインフラストラクチャでも必要になるのですから。年間のサポート費用は相当なものになります。Proxmox VEへの移行に解を求めた企業も多いのですが、そこで問題となるのが一元化された管理オプションの不足でした。結局、ESXiハイパーバイザーを選んだ企業が多いのもそのためです。ProxmoxにVMware vCenterのような管理ツールさえあれば・・・ という声は少なくありませんでした。
そこで今回ご紹介したいのが、ProxCenterです。複数のProxmoxクラスタを単一画面から管理できるセルフホスト型プラットフォームです。
Proxmox Datacenter Manager(PDM)もVMware vCenterの代替ソリューションとして有力ですが、PDMについては前回の記事で言及したので、そちらを参照してください。
ここでは、より”vCenter的”な機能性を備えたサードパーティ ソリューション、ProxCenterに焦点を当て、システム要件、インストール手順、主要な機能、さらにProxmox仮想環境をProxCenterで管理することの意義について解説していきます。

ProxCenterとは?
ProxCenterは、Proxmox Virtual Environment(PVE)とProxmox Backup Server(PBS)のためのオープンソースの管理ソリューションです。複数のProxmoxサーバー、クラスタ、PBSインスタンスを、エージェントを通さず、既存の設定も変えることなく、集約して管理でき、統合ダッシュボードとして機能します。 データのやり取りはProxmox API経由でのみ行われるので、インフラストラクチャが安全に保たれ、余計なセキュリティリスクを生じさせることもありません。

ProxCenterトポロジー
ProxCenterは、言わば「ProxmoxのvCenter」と考えることもできます。リアルタイムのモニタリング、タスクの自動化、高度なセキュリティ機能を最新のウェブUIで操作でき、vCenter的なユーザーエクスペリエンスを享受できます。ProxCenterには、コミュニティ エディションとエンタープライズ エディションがあり、基本的なニーズを満たすにはコミュニティ エディションが、企業規模の本番環境デプロイメントにはDRSやマイクロ セグメンテーション機能を備えたエンタープライズ エディションが便利です。
システム要件
ProxCenterは軽量で、Docerを介してデプロイされるので、あらゆるLinuxサーバーで最低限のオーバーヘッドで実行できます。システム要件を表にまとめると、以下のようになります。
| コンポーネント | 要件 |
| オペレーティングシステム | Dockerをサポートする任意のLinuxディストリビューション(Ubuntu、Debianなど) |
| CPU | 最低2コア以上(大規模な環境では4コア以上が推奨されます) |
| RAM | 最低4 GB(管理するノード数次第では8 GB以上が推奨されます) |
| ストレージ | 10 GBの空き領域(Dockerイメージとデータ用) |
| ネットワーク | Proxmox APIポート(デフォルトは8006)と高度な機能向けには任意でSSH(22) |
| ソフトウェア | Dockerがインストール済みであること(Proxmoxノードに追加エージェントは不要) |
| 互換性 | Proxmox VE 7.x以上、Cephストレージ、ローカル、NFS、Ceph RBD/FS、ZFS、LVM、PBS、iSCSIなど、さまざまなストレージタイプに対応 |
ハードウェアに関しては、Dockerさえ利用可能であれば、それ以上の必須条件はありません。したがって、ProxCenterは、パソコンでの実証実験から本格的なエンタープライズ環境まで、あらゆる環境で活用できます。ただし、AIアナリティクスなどのエンタープライズ機能を使用するには、ホストにそのための十分なリソースが確保されている必要があります。
インストール手順
ProxCenterの使用を開始するのは、いたって簡単です。特に、コミュニティ エディションでは一つのコマンドを実行するだけでインストールできます。
インストール手順は以下のとおりです。
1. LinuxディストリビューションによってはDockerが入っていない場合があるので、その場合はDockerをインストールします。
sudoaptinstalldocker.io

2. ProxCenterのインストールスクリプトを実行します。
| curl -fsSL https://proxcenter.io/install/community | sudo bash |

これにより、Dockerイメージが取得され、コンテナがセットアップされます。
3. ウェブUIにアクセスします。そのためには、まずブラウザを起動し、指定のURLのサイトを開きます。URLは通常、http://your-host-ip:portの形式です(例:http://192.168.1.107:3000)。最初のログインで管理者アカウントを作成します。
4. Proxmoxへの接続を追加します。ウェブUIで、APIの認証情報(例:十分な権限のあるroot@pamトークン)を使用してPVEクラスタを追加します。ProxCenterでは、APIトークンによる安全な認証を通じて、Proxmox VE(PVE)およびProxmox Backup Server(PBS)インスタンスに接続することができます。これを利用するには、Proxmoxクラスタのアクセストークンを作成する必要があります。アクセス方法としては、これが推奨されますが、ユーザー名/パスワードの組み合わせを使用することも可能です。

不明な点があれば、こちらのProxCenterドキュメント(英語)を参照してください。
5. Proxmox Backup Server(PBS)を設定します(使用する場合)。
コミュニティ エディションとエンタープライズ エディションの違い
コミュニティ エディションでは提供されない、エンタープライズ エディションならでは機能は以下のとおりです。
● DRS(分散リソース スケジューラ)によるインテリジェント ワークロード バランシング。
● ローリング アップデートによるダウンタイム ゼロのマイグレーション。
● LDAP/AD統合によるRBAC(ロールベースのアクセス制御)とネットワーク マイクロ セグメンテーション。
● AIを活用したインサイト、予測分析、自動レポート(PDF、AI主導型)。
● アラート、通知、タスク スケジュール設定、監査ログ。
なお、エンタープライズ エディションの利用にはライセンスキーが必要になります。コミュニティ エディションはGithubのProxcenter UIセクションから無料で取得できます。
主な機能
ProxCenterには、Proxmoxのシステム管理者向けにカスタマイズされた技術的な特性が盛りだくさんです。代表的なものをいくつか紹介します。
● モジュラーダッシュボード ― CPU、RAM、ストレージ、IOPS、スループット、アラートに関するリアルタイムの指標を表示する、カスタマイズ可能なウィジェットです。ドラッグ アンド ドロップで、ニーズに合わせて柔軟にビューを構成することができます。

● インベントリ マネジメント ― VM、LXCコンテナ、ノード、ストレージをすべてのクラスタにわたって統一されたビューで確認でき、一括アクション、タグ、フィルタでオペレーションを効率化します。
● Cephモニタリングとレプリケーション ― Cephはオープンソースのソフトウェア定義ストレージ プラットフォームです(VMwareのvSANに相当します)。ProxCenterはCephとの統合、各OSDの使用率、クラスタ間RBDレプリケーションをサポートし、自動フェイルオーバー、増分同期機能も備えています。
● 分散リソース スケジューラ(DRS – エンタープライズ)― リソース使用率のモニタリングと必要に応じた自動VMライブ マイグレーションによって、負荷の調整と集中スポットの回避を、手動介入なしで実施します。

● ネットワーク マイクロ セグメンテーション(エンタープライズ)― 分散ファイアウォール、トラフィック仮想化、東西(横方向)トラフィックの隔離ルールなどを駆使して、VMware NSXに相当する仕組みでゼロトラスト セキュリティを徹底します。
注:ProxCenterはまだバージョン1.xの発達段階にあり、多くの機能はさらに改善される可能性があります。
● ローリング アップデート/サイト リカバリ ― ノードを段階的に順番に排除することでゼロダウンタイムのアップデートを可能にします(VMwareのvSphere Lifecycle Managerで各ホストがクラスタをメンテナンスモードにしてパッチとリブートを繰り返すのと同様のアプローチです)。
● バックアップ/アラート ― スケジュール設定、ブラウジング、細分化されたリストアなどで複数のProxmox Backup Server(PBS)を管理でき、メール、Slack、Teams、Webhookなどでアラート発信できます(上限も設定できます)。
● セキュリティ/インテリジェンス ― CVEスキャニング、LDAP/AD/SSO統合のRBAC、AIを活用した予測容量プランニング、PDFにエクスポート可能なカスタムレポート生成などが利用できます。
これらの機能はフロントエンドにReact、バックエンドにGoを使用した設計で、AES‐256暗号化やTLS 1.3を採用し、高度のパフォーマンスとセキュリティを確保しています。
ProxCenter機能の早見表
| 機能 | コミュニティ エディション | エンタープライズ エディション |
| ダッシュボード、健全性スコア | ✓ | ✓ |
| インベントリ(ノード、VM、コンテナ) | ✓ | ✓ |
| ウェブターミナル(xterm.js) | ✓ | ✓ |
| VNCコンソール(noVNC) | ✓ | ✓ |
| トポロジーマップ | ✓ | ✓ |
| ストレージ管理 | ✓ | ✓ |
| Cephモニタリング | ✓ | ✓ |
| バックアップ モニタリング(PBS) | ✓ | ✓ |
| イベントログ | ✓ | ✓ |
| ユーザー管理 | ✓ | ✓ |
| テーマ/カスタマイゼーション | ✓ | ✓ |
| 言語サポート(英語/フランス語) | ✓ | ✓ |
| DRS(分散リソース スケジューラ) | ✓ | |
| サイト リカバリ(Cephレプリケーション) | ✓ | |
| ネットワーク マイクロ セグメンテーション | ✓ | |
| リソース トレンド、AIインサイト | ✓ | |
| アラート、通知 | ✓ | |
| タスクセンター(ジョブ スケジュール) | ✓ | |
| レポート(PDF、AI主導) | ✓ | |
| RBAC(ロールベース アクセス制御) | ✓ | |
| 監査ログ | ✓ | |
| LDAP/Active Directory | ✓ |
Proxmoxシステム管理者が特に重宝する特性
大規模な環境でProxmoxを活用する組織では、特にProxCenterの以下の特長がシステム管理者に大きな恩恵をもたらすことが期待できます。
● 一元化されたシステム制御 ― 複数のProxmoxウェブUI間を行ったり来たりする必要がなくなり、すべて単一インターフェースで管理できます。特にマルチクラスタ環境で時間の節約をもたらします。
● 自動化/効率化 ― 分散リソース スケジューラ(DRS)とローリング アップデート機能によって、手動タスクが減り、ダウンタイムとヒューマンエラーを最小限に抑えられます。
● セキュリティ強化 ― マイクロ セグメンテーションと脆弱性スキャニングがデータ保護レイヤーを分厚くし、企業コンプライアンスを強固にします。さらに、RBACによる細分化されたアクセス制御で、ルートアクセスが不正利用されるリスクが回避できます。
● オブザーバビリティの改善 ― Ceph/ストレージのリアルタイム モニタリングで問題の発生を未然に防ぐことができ、カスタム レポートで監査とプランニングを強化できます。
● ロックインなしのスケーラビリティ ― コミュニティ エディションでもノード数に制限がなく(機能に制限あり)、オープンソースの柔軟性をフル活用できます。
Proxmox Datacenter Manager(PDM)と比較しても、ProxCenterは機敏で軽量でカスタマイゼーションの柔軟性に優れている特長があります。また、自動化などの機能が充実しているので本番環境での使用にも適性があります。エンタープライズ エディションで利用できるネットワーク マイクロ セグメンテーションなどは、VMwareのNSXに匹敵し、リアルタイムのトラフィック フロー表示や分散ファイアウォール ルールを確認することもできます。VMごとにポリシーを適用したり、ワークロードを隔離したりする機能もあります。

ProxCenterのより確実な評価は、もう少し継続的に使用してみないとわかりませんが、ざっと使ってみただけでも開発チームの本気度は十分伝わってくるので、試してみる価値があることは間違いありません。
ProxCenterとCephの統合
Proxmox VEをCephと組み合わせてハイパーコンバージド ストレージを活用しているユーザーには周知のことですが、Cephのビルトイン ダッシュボードはProxmoxにおいて複数クラスタにスケーリングしたり、複数サイトにまたがる可視性を必要とする場合に機能性が制限されます。

これを補完してくれるのがProxCenterです。ProxCenterは、接続されたすべてのProxmoxクラスタからCephデータを集約し、単一のインターフェースで管理できるようにします。元のpvecephツールやCeph CLIを置き換えるのではなく、オブザーバビリティを高めて予測インサイトで補強し、エンタープライズ エディションでは障害復旧(DR)オペレーションも改善してくれる点が、ProxCenterの利点です。
データはProxmox API(ポート8006)からのみ取得されるので、Cephノードにエージェントは不要で、Cephクラスタへの直接アクセスも必要ありません。つまり、余計なセキュリティのリスクを生むことなく、Proxmoxだけでは得難いデータセンター全体の一元化されたオブザーバビリティをProxCenterはもたらしてくれます。
まとめ
Proxmoxを管理しているシステム管理者にとって、ProxCenterは現在Proxmox環境に足りない重要な部品である可能性があります。VMware vCenterのようなユーザーエクスペリエンスを得られるうえに、より簡単にデプロイできて機敏に動作します。Proxmoxシステム管理者は、無料のProxCenterコミュニティ エディションを一度試してみない手はありません。まずは使ってみて、組織のニーズに合うかどうかを見極めることが大事です。その評価に応じて、あとからエンタープライズ エディションにアップグレードすることもできます。

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