StarWind VSANをKVMベースの環境にデプロイする際の基本的な流れは、Controller Virtual Machine (CVM) を利用することが鍵となります。
CVMは、StarWind VSANのソフトウェアが動作するLinuxベースの仮想アプライアンスであり、これをKVMホスト(物理サーバー)上にデプロイすることで、ホストのローカルストレージを共有ストレージプールとしてまとめ、iSCSIターゲットとしてホスト側へ提供します。
以下に、一般的なKVM環境(例:Proxmox VE、oVirt/OLVMなど)でのデプロイ手順の概要を、ステップごとに説明します。
🛠️ StarWind VSAN (CVM) デプロイのステップ概要
ステップ 1: KVMホストの準備
- OSとKVMのインストール: 選択したKVMベースのOS(例: Proxmox VE、またはRHEL/CentOS/Ubuntu + KVM)を物理サーバーにインストールします。高可用性を実現するためには、最低2台のノードが必要です。
- ネットワーク構成: 以下のトラフィック用に、それぞれ異なるネットワークインターフェース(またはVLAN)とLinuxブリッジを設定します。
- 管理 (Management): KVMホスト、CVM、および管理用の通信。
- iSCSI/データ (iSCSI/Data): 仮想マシンがデータを読み書きするトラフィック。
- 同期 (Synchronization): 2つのCVM間でデータをリアルタイムに複製(ミラーリング)するためのトラフィック。専用の高速回線(10GbE以上推奨)を使用します。
ステップ 2: StarWind CVMのデプロイ
- CVMアプライアンスのダウンロード: StarWind社からKVM用の**CVMイメージ(OVAまたはQCOW2形式)**をダウンロードします。
- CVMのインポートと起動: ダウンロードしたCVMイメージを、各KVMホストに仮想マシンとしてインポートし、起動します。
- ローカルディスクの割り当て: CVMに、VSANで使用したい物理的なローカルストレージディスク(HDDやSSD)を、**仮想ディスクとしてではなく、パススルー(またはVirtIO SCSIコントローラ経由で直接)**で割り当てます。
ステップ 3: StarWind VSANの設定(HAデバイスの作成)
- 管理ツールへのアクセス: CVMにログインするか、Web UI(管理コンソール)を使用して、StarWind VSANの設定インターフェースにアクセスします。
- ストレージプールの作成: CVMに割り当てられたローカルディスクを使用して、冗長化されたストレージプールを作成します。
- 高可用性 (HA) デバイスの作成:
- このストレージプール上に、KVMホストに提供する**仮想ディスク(LUN)**を作成します。
- このLUNを、同期(Synchronization)リンクを使用して、**パートナーノード(もう一方のCVM)とリアルタイムにレプリケート(ミラーリング)**する設定をします。これにより、ノード障害に耐えられるアクティブ-アクティブのHAストレージが完成します。
ステップ 4: KVMホストのiSCSIターゲットへの接続
- iSCSIイニシエータの設定: 各KVMホスト(例:Proxmoxノード)で、iSCSIイニシエータを設定し、手順3で作成したHAデバイスが公開しているiSCSIターゲットに接続します。
- マルチパスI/O (MPIO) の設定: 2つのCVMが同じストレージを公開しているため、KVMホスト側でMPIOを設定し、両方のCVMへのパスを冗長化します。これにより、いずれかのCVMがダウンしても、データアクセスを継続できます。
- クラスターファイルシステムの構成: KVMホスト側で、iSCSI LUNをクラスター対応のファイルシステム(例: ProxmoxのLVM-thin、oVirtのストレージドメインなど)として構成し、仮想マシンを配置するための共有ストレージとして利用を開始します。
このCVMアプローチにより、StarWind VSANはKVM環境でハイパーコンバージドインフラストラクチャ (HCI) を実現し、ローカルストレージのみで高可用性を提供します。


